同位体とは?

放射性同位体と安定同位体

自然界の炭素や酸素を含む化合物には、それぞれ質量数(原子量)の異なる同位体(Isotopes)画存在します。 そして同位体には、放射性同位体(radioisotopes)と安定同位体(stable isotopes)の二種類があります。 前者は一定の速度で放射線を出して崩壊していくのに対して、後者は崩壊することのない安定な同位体です。 放射性同位体は年代測定に、安定同位体は物質の移動や起源・由来の追跡に用いられます。

 

        主な同位体


安定同位体 放射性同位体
水素(H) H, 2H 3H
炭素(C) 12C, 13C 14C
窒素(N) 14N, 15N -
酸素(O) 16O, 17O, 18O -

例えば炭素の同位体には12C,13C(安定同位体)と14C(放射性同位体)が存在します。 そしていろいろな炭素化合物中に同位体の存在する割合(12C : 13C , 12C : 14Cなど)を調べると、物質によって少し異なることがわかります。  例えば、 大気中のCO2の13C/12Cは、植物中の炭素の13C/12Cより大きいことがわかります。 大気から植物に炭素が移行する際に、いろいろな過程をへて、同位体の組成が変わったためです。 このように物質によって同位体の比が変わることを同位体分別といいます。 炭素の安定同位体比は、PDBとよばれる標準物質の"13C/12C比"に対する、ある物質の"13C/12C比" の比で表されます。 単位は‰(パーミル:千分率)です。 ちなみに大気CO2の平均的な炭素安定同位対比(δ13C)は-10‰前後です。 それに対して植物は-10~-28‰の値をとります。


C3植物・C4植物・CAM植物

植物は、光合成によって炭素を固定するときに、先に述べた同位体分別が起こります。そして光合成のしかたによって同位体分別の量が異なります。 植物は、光合成のしかたによってC3植物・C4植物・CAM植物に分類することができます。

 

光合成のサイクル
同位対比
C3 レンゲ、クローバー -25‰前後
C4 トウモロコシ,サトウキビ
-15‰前後
CAMS サボテン、パイナップル -10~-20‰

逆に、植物の炭素安定同位体比を測定すれば、その植物がどういった光合成サイクルのものか、おおよそわかるということです。

 

 

同位体分析を食品に応用する

例えば、高級食材のひとつであるカナダのメープルシロップは、砂糖楓の樹から採取した樹液を煮詰めて作られ、その主な成分はショ糖です。 その炭素安定同位体比はC3植物のそれを反映して-25‰前後です。 純粋なメープルシロップに安価な、コーンシロップやサトウキビ由来の甘ショ糖を混ぜると、炭素同位対比が変化します。 コーンシロップやサトウキビはC4植物で、炭素安定同位対比が-15‰ですから。 このように、食品の同位体を分析して、本来示すはずの同位対比とは違う分析結果が得られた場合は、食品の偽和が疑われます。

 


 

 

 

Contact Us

株式会社地球科学研究所

Chikyu Kagaku Kenkyusho

 

phone  052(802)0703

 

email geoinfo@geolab.co.jp